更新日 2022.10.06

共通ポイントの消費税における「値引き」処理

Ⅳ 顧客における処理

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 顧客は、ポイントを付与する取引を行った加盟店がポイント費用を課税仕入れから不課税仕入れに変更したとしても、何ら処理を変える必要はありません。
 一方、顧客がポイントを使用した加盟店がポイントの使用額相当額を「値引き」にするということになると、消費税の課税事業者となっている顧客においては、ポイントを使用して行う商品の購入等における課税仕入れの金額が「値引き」の分だけ少なくなることになります。
 顧客がポイントを使用して商品の購入等を行った際に、加盟店が「値引き」という処理をしなかった場合(変更前)と「値引き」という処理をした場合(変更後)の顧客における処理の相違は、レシートの相違で確認することができます。
 つまり、顧客の処理は、国税庁が公表している「No.6480 事業者が商品購入時にポイントを使用した場合の消費税の仕入税額控除の考え方」に示されている「②のケース:値引きでない」というレシートに示されているとおり、ポイントを控除しない金額の課税仕入れ(「8%タイショウ 540円」と「10%タイショウ 550円」)を計上するという処理から、同じく「①のケース:値引き」というレシートに示されているとおり、ポイントを控除した金額の課税仕入れ(「8%タイショウ 530円」と「10%タイショウ 539円」)を計上するという処理に変わることになる、ということです。
 顧客がこのように処理を変更しなければならないということになると、顧客においては、課税仕入れの額が減少し、納付するべき消費税額が増加することになります。
 顧客にとって、この変更の前後の処理のいずれが正しいのかというと、ポイントを用いないで行った商品の購入等とポイントを用いて行った商品の購入等とを比べてみると、前者よりも後者の方が購入金額が安くなるわけですから、ポイントを用いて商品の購入等を行っていながら、ポイントを用いないで商品の購入等を行った場合と同じ額の課税仕入れを計上するということになると、当然、課税仕入れが過大であるということにならざるを得ず、変更前の処理は、事実に反するものであって、変更後の処理が正しい、ということになります。
 「No.6480 事業者が商品購入時にポイントを使用した場合の消費税の仕入税額控除の考え方」に示されている二つのレシートは、現金支払額がいずれも1,069円で同額となっていますので、加盟店がポイントの使用を「値引き」と処理した場合であっても顧客は商品等の課税仕入れの額を二つのレシートに示されたいずれかとすることができると誤解しがちですが、共通ポイントにおいても、加盟店がポイントの使用を「値引き」と処理すると、加盟店は「①のケース:値引き」のレシートに示されたように、必ず、ポイントを控除した後の金額で商品の購入等の対価を示すことになりますので(注9)、必然的に、顧客も、ポイントを控除した後の金額で商品の購入等における課税仕入れを計上することとなります。

(注9) ポイントを用いた取引に関して、会社の役員や従業員が自己(個人)に付与されたポイントを用いて会社の経費の精算を行い、その役員や従業員がレシートに表示された商品等の定価に相当する金額の支払いを受けてポイントの換金と実質的に同じことを行うというケースが見受けられますが、加盟店がポイントの使用について「値引き」という処理をするということになれば、レシートには、必ず、商品等の定価からポイントの使用額を控除した後の金額が表示されることになりますので、そのようなケースは、少なくなるものと考えられます。

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株式会社TKC 顧問 税理士 朝長英樹

税理士 朝長 英樹(ともなが ひでき)

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日本税制研究所 代表理事

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