更新日 2023.08.09

新リース会計基準の論点解説

第2回 新リース会計基準で想定される実務上の論点

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TKC全国会 中堅・大企業支援研究会会員 公認会計士・税理士 宮嶋 芳崇

TKC全国会 中堅・大企業支援研究会会員

公認会計士・税理士 宮嶋 芳崇

2016年にIFRS会計基準、米国会計基準で、リース取引に関する会計基準が公表され、日本でも2019年3月から、新リース会計基準の開発に着手してきました。
2023年5月2日に企業会計基準委員会から、企業会計基準公開草案第73号「リースに関する会計基準(案)」が公表され、リース取引の会計処理について、国際的な会計基準との整合性を図ろうとしています。
そこで、現行の会計基準とIFRS基準について解説していきます。

当コラムのポイント

  • 設例①(現行基準)機械装置のリース取引
  • 設例②(新リース会計基準)機械装置のリース取引
  • 設例③(新リース会計基準)賃貸借契約
目次

前回の記事 : 第1回 新リース会計基準の概要

1.はじめに

 2023年5月2日に企業会計基準公開草案第73号「リースに関する会計基準(案)」(以下、「新リース会計基準(案)」)が公表されました。「新リース会計基準(案)」によれば、会計基準の公表から原則的な適用時期までの期間を2年程度と予定されています。第1回目の新リース会計基準(案)の概要解説を受けて、第2回目では、設例を使って、消費税・法人税に関する課題を検討します。
 新リース会計基準では次のような契約形態、期間が多いものと思われます。

 Ⅰのケースは、リース契約の内容通りの期間で使用期間を当初から想定して使用権資産計上がされるケース。Ⅱのケースは、契約当初からリース契約の期間を超えて(又は短く)使用することを想定して使用権資産計上がされるケース。Ⅲは、不動産賃貸借契約で事業計画(又は過去実績)に基づき使用権資産が計上されるケースです。
 そこで、現行リース基準と新リース基準とについて、まずは以下の3つのケースを会計処理、法人税、消費税の観点から比較してみたいと思います。

2.設例1(ケースⅠ)(現行リース会計基準)機械装置のリース取引

 機械装置をリース契約で利用する。
 所有権移転外ファイナンス・リース取引で利息の処理は、原則法(利息法)による。
 リース期間は4年、月額リース料は11,000円(税込)の後払い、利率は年5.0%、消費税率10%。

①リース取引開始日

②リース料の支払いと減価償却費の計上

3.設例2(ケースⅠ)(新リース会計基準)機械装置のリース取引

条件は設例1と同様

①リース取引開始日

②リース料の支払時と減価償却費の計上

4.設例3(ケースⅢ)(新リース会計基準)不動産賃貸借契約の処理

 オフィスビルの賃貸借契約を締結している。契約期間は2年。合理的利用期間を4年と見積もる。
 月額賃借料は11,000円(税込)で、4年間金額に変更はない想定。利率は年5.0%、消費税率10%。

①賃貸借契約締結日

②賃借料の支払いと賃貸料の振替処理並びに減価償却費の計上

5.まとめ

 設例1と設例2に関しては、貸借対照表科目が「リース資産」から「使用権資産」へと変わるのみで会計処理も、法人税・消費税に与える影響はないと考えます。
 一方、設例3については、損金の額に算入する総額に影響はないですが、法人税の損金算入時期に影響する可能性があります。また、消費税の仕入税額控除の時期については、賃借人の不動産賃貸借契約に係る契約期間に基づき、従来通り賃借料を支払うべき日の属する課税期間の課税仕入れとして分割控除する可能性が高いと思われます。いずれも会計基準案が確定した以後の税制改正において一定の措置が予想されるため、こちらについては今後注視が必要です。
 なお、次回以降において移転外リース契約であって契約期間≠使用期間の場合や、不動産賃貸借契約であって子会社が親会社の不動産を使用権資産として計上する場合など、新リース会計基準が導入されることにより法人税・消費税の論点を考察してみたいと考えています。

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プロフィール

TKC全国会 中堅・大企業支援研究会会員 公認会計士・税理士 宮嶋芳崇

公認会計士・税理士 宮嶋 芳崇(みやじま よしたか)

TKC全国会 中堅・大企業支援研究会会員
TKC企業グループ会計システム普及部会会員

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税理士法人ZERO

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