初歩から学べる固定資産の税務

第3回 今さら聞けない!別表十六

更新日 2025.06.23

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TKC全国会 中堅・大企業支援研究会会員 税理士 佃 百合

TKC全国会 中堅・大企業支援研究会会員

税理士 佃 百合

新たに税務担当となった方が法人税における固定資産の取扱いや償却資産税について網羅的に学んでいただけるよう解説します。また、実務経験者の方が、改めて固定資産の税務についての知識を整理する際にもご活用いただけます。

当コラムのポイント

  • 法人税法における減価償却についての一定の制限と減価償却超過額の考え方について解説します。
  • 法人税の別表四、五(一)、十六の記載方法について具体例を挙げて解説します。
  • 法人税における固定資産の申請・届出について解説します。
  • 法人税法の減価償却と償却資産税の違いについて解説します。
目次

前回の記事 : 第2回 今さら聞けない!減価償却超過額とは?(下)

 第1回と第2回は、法人税法における減価償却についての一定の制限と減価償却超過額の考え方について解説しました。第3回は別表十六について解説します。

1.別表十六とは? ~減価償却に関する明細書の添付~

 法人税法では、減価償却資産について償却費として損金経理した金額がある場合には、償却限度額その他償却費の計算に関する明細書をその事業年度の確定申告書に添付しなければならない、と定めています。(法令63①)
 法人税申告書に添付する明細書(別表)のうち、「償却限度額その他償却費の計算に関する明細書」など「償却」に関するものが別表十六にまとめられています。
 なお、個別資産ごとの明細書を保存している場合に限り、資産の種類ごとに、かつ、償却の方法の異なるごとに区分し、その区分ごとの合計額を記載した明細書を添付することも認められています。(法令63②)実務では、資産が多数あるため、合計額を記載した明細書を添付していることが多いと思われます。

<別表十六関係>

・別表十六(一)
旧定額法又は定額法による減価償却資産の償却額の計算に関する明細書
・別表十六(二)
旧定率法又は定率法による減価償却資産の償却額の計算に関する明細書
・別表十六(三)
旧生産高比例法又は生産高比例法による鉱業用減価償却資産の償却額の計算に関する明細書
・別表十六(四)
旧国外リース期間定額法若しくは旧リース期間定額法又はリース期間定額法による償却額の計算に関する明細書
・別表十六(五)
取替法による取替資産の償却額の計算に関する明細書
・別表十六(六)
繰延資産の償却額の計算に関する明細書
・別表十六(七)
少額減価償却資産の取得価額の損金算入の特例に関する明細書
・別表十六(八)
一括償却資産の損金算入に関する明細書
・別表十六(九)
特別償却準備金の損金算入に関する明細書
・別表十六(十)
資産に係る控除対象外消費税額等の損金算入に関する明細書
・別表十六(十一)
非適格合併等に係る調整勘定の計算の明細書

2.別表十六(一)旧定額法又は定額法による減価償却資産の償却額の計算に関する明細書の記載例

【例】工具(測定工具)

取得価額
耐用年数
償却方法
償却率 
期首帳簿価額
会計上の減価償却費
期末帳簿価額
:600,000円
:5年
:定額法
:0.200
:490,000円(税務上正しい帳簿価額とします)
:180,000円
:310,000円
(1) 税務上の償却限度額
=取得価額×定額法の償却率
=600,000円×0.200
=120,000円
(2) 償却超過額
=会計上の減価償却費-税務上の償却限度額
=180,000-120,000
=60,000円

3.別表十六(二)旧定率法又は定率法による減価償却資産の償却額の計算に関する明細書の記載例

【例】工具(測定工具)

取得価額
耐用年数
償却方法
償却率
改定償却率
保証率
期首帳簿価額
会計上の減価償却費
期末帳簿価額
:600,000円
:5年
:定率法
:0.400
:0.500
:0.10800
:380,000円(税務上正しい帳簿価額とします)
:180,000円
:200,000円
(1) 税務上の償却限度額
  • ① 調整前償却額=期首帳簿価額×定率法の償却率=380,000×0.400=152,000円
  • ② 償却保証額=取得価額×保証率=600,000×0.10800=64,800円
  • ③ ①≧② ∴152,000円
(2) 償却超過額
=会計上の減価償却費-税務上の償却限度額
=180,000-152,000
=28,000円

4.別表十六(七)少額減価償却資産の取得価額の損金算入の特例に関する明細書の記載例

 租税特別措置法67条の5「中小企業者等の少額減価償却資産の取得価額の損金算入の特例」を適用する場合に添付する明細書です。
 この規定は、確定申告書等に別表十六(七)の添付がある場合に限り適用されますので注意が必要です。(これを「申告要件」といいます。)

【例】工具(測定工具)

取得価額:250,000円

5.別表十六(八)一括償却資産の損金算入に関する明細書の記載例

【例】前期:
工具(測定工具)
取得価額:120,000円
会計上の減価償却費:120,000円(取得時に全額費用計上)
当期:
工具(測定工具)
取得価額:180,000円
会計上の減価償却費:180,000円(取得時に全額費用計上)

(1) 前期取得分

① 前期
  • 1) 損金算入限度額=取得価額×前期の月数/36=120,000×12/36=40,000円
  • 2) 損金算入限度超過額=損金経理額-限度額=120,000-40,000=80,000円(繰越超過額)
② 当期
  • 1) 損金算入限度額=取得価額×当期の月数/36=120,000×12/36=40,000円
  • 2) 損金算入限度不足額=限度額-損金経理額=40,000-0=40,000円
  • 3) 40,000(不足額)<80,000(前期繰越超過額) ∴40,000円(認容額)

(2) 当期取得分

① 損金算入限度額=取得価額×当期の月数/36=180,000×12/36=60,000円
② 損金算入限度超過額=損金経理額-限度額=180,000-60,000=120,000円

6.別表十六(十)資産に係る控除対象外消費税額等の損金算入に関する明細書の記載例

 税抜経理方式を採用している法人が資産に係る控除対象外消費税額等について損金経理した金額がある場合、または、繰延消費税額等について損金経理した金額がある場合に添付する明細書です。

【例】
繰延消費税額等:1,000,000円
会計上の繰延消費税等償却額(損金経理額):1,000,000円
(1) 税務上の損金算入限度額
=繰延消費税額等×当期の月数/60×1/2 (※)発生事業年度は1/2
=1,000,000×12/60×1/2
=100,000円
(2) 損金算入限度超過額
=会計上の損金経理額-税務上の損金算入限度額
=1,000,000-100,000
=900,000円

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プロフィール

TKC全国会 中堅・大企業支援研究会会員 税理士 佃 百合

佃 百合(つくだ ゆり)

TKC全国会 中堅・大企業支援研究会会員

略歴
20年以上、税理士業界に従事。主に法人の税務に関与。現在、中野洋税理士事務所に所属。
過去に開催したセミナーでは税法を分かりやすく解説することに定評がある。
主な執筆コラム等
TKC WEBコラム「償却資産申告の留意点~よくある質問Q&A~
TKC 税務・会計基礎講座「印紙税基礎講座
ホームページURL
中野洋税理士事務所

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