更新日 2023.09.19

共通ポイントの消費税の処理

最後に

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 筆者は、2022年10月に「共通ポイントの消費税における「値引き」処理」を本コラムに寄稿した頃までは、共通ポイントの消費税の処理を正しいものに変更したとしても、会員、加盟店及び運営会社のいずれにおいても、過去の課税期間の消費税額について、大きな金額の還付や追加納付が必要になるということはないと考えていました。
 しかしながら、インボイス制度の開始が迫ってくるにつれ、さまざまな事業者や税理士から相談を受けるようになり、また、さまざまな情報が各所から入ってくるようになってきて、筆者が想定もしていなかったようなケースがあることが分かってきました。
 特に、大手の事業者においては、過去の課税期間の消費税額について、多額の還付が必要となることが明確なケースがあったり、また、非常に多額の追加納付が必要であることが明確なケースがあったりします。
 当然のことながら、このようなケースについては、国税当局は、法令の規定と事実に基づき、更正期限内の過去の全ての課税期間について、正しい消費税額を算出した上で、還付を行ったり、追加納付を求めたりすることが必要となります。特に、上記Ⅲにおいて述べたとおり、加盟店の中には、運営会社から送付されてくるポイント費用を不課税とする請求書におけるその記載と、会員がポイントを使用して商品の購入等を行った時に発行したレシートにおける商品の定価に対する消費税額の記載とに従い、機械的に消費税額を計算しているというところが少なくないものと想定されますので、そのような加盟店から非常に多くの更正の請求がなされる可能性があるということに留意しておく必要があります。
 また、国税庁仕訳表と国税庁考え方に関し、昨年4月に、三越伊勢丹の共通ポイントであるMIポイントについて、ポイントの使用額を「値引き」とすることを認めたにもかかわらず、それらを訂正することなくそのまま公表し続けていることにより、加盟店において、レシートのシステム変更の着手が遅れてしまい、本年10月1日のインボイス制度の開始までにレシートのシステム変更を終えることができないというケースが大量に生ずる状況となっていますので、国税庁としては、ポイントの使用額を「値引き」とすることで良いかと聞かれれば「良い」とか「差し支えない」と答えるというだけでなく、早急に、国税庁仕訳表と国税庁考え方を適切なものに訂正した上で、共通ポイントの消費税の正しい処理について、会員、加盟店及び運営会社に対し、自ら積極的に周知する等の対応策を講ずる必要があると考えられます。

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株式会社TKC 顧問 税理士 朝長英樹

税理士 朝長 英樹(ともなが ひでき)

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日本税制研究所 代表理事

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