TKC全国会 中堅・大企業支援研究会(中大研)

掲載日:2010.06.21

グループ法人税制と連結納税制度の比較検討のポイント

第6回 グループ法人税制における中小特例の取り扱いと実務上のポイント

税理士  畑中 孝介 TKCシステム・コンサルタント
税理士  畑中 孝介
平成22年度税制改正においてグループ法人税制が創設されました。そこで、皆さんが気になる制度の概要や連結納税制度との相違点、比較検討のポイントなどを全10回にわたって連載いたします。

2010年6月21日掲載

 前回まではグループ法人税制のメリットになりうる部分の解説でしたが、今回は、デメリットでもある「中小企業向け特例措置(以下、「中小特例」といいます。)の取り扱いと実務上のポイント」を解説します。

【グループ法人税制における中小特例の取扱い】

 これまで、中小特例の適用の可否は、自社の資本金等の規模で判断していました。しかし、グループ法人税制の導入に際して、自社の資本金等の規模に加えて、親会社の資本金等の規模についても判定基準に加えられました。

 これにより、親法人の資本金が5億円以上(会社法上の大会社)の場合、その完全子法人は、自社の資本金が1億円以下であっても、中小特例の適用を受けることができなくなりました。

 今回の改正の背景として、以下の理由が挙げられます。

  1. 大会社の完全子法人については政策的配慮の必要性が乏しい。
  2. 事業部門を中小法人に分社化した場合と1社に集中させた場合とで、税負担が大きく異なるため、連結納税制度と同様の制度とし、税負担を同一化させる。
  3. 連結納税の導入阻害要因となりうるため、グループ法人税制にも導入を図る。

 これにより、上記の条件に該当する会社は、以下の中小特例を受けられなくなります。

  1. 中小法人の軽減税率
  2. 特定同族会社の特別税率(留保金課税)の不適用
  3. 貸倒引当金の法定繰入率
  4. 交際費等の損金不算入制度における定額控除制度
  5. 欠損金の繰戻しによる還付制度

 これらは事業年度単位で適用するため、平成22 年4 月1 日以後開始事業年度から適用されます。

【グループ法人税制における中小特例の実務上のポイント】

 以下の図は、親会社の資本金が5億円以上の完全子法人において、これまでの中小特例を適用していた場合と、グループ法人税制により中小特例を適用できなくなった場合とを比較した図です。(設例の条件 当期利益:1,000万円 交際費:600万円)

(株式会社TKC主催「TKC連結納税セミナー」資料より転載 平成22年6月7日開催)

 中小特例を受けられないことで、上記の図のように約350万円の税負担が増え、当期の税額に大きな影響が出る可能性もあります。子法人に対して、影響額を試算し、予算等への影響を加味するよう伝達する配慮が重要になります。

 今までは、中小特例のタックスメリットを享受するため、分社化していたケースもあったかもしれません。しかし、今後は、中小特例のタックスメリットが消滅します。また、第5回のコラムで説明したように、グループ内での現物配当(みなし配当を含む)について、含み益(譲渡損益)を繰り延べられることとなり、源泉徴収も不要とされました。  

 これらのことから、必要に応じた機動的な再編等により、あるべきグループの形態を見直すきっかけとしてとらえるべきではないかと思います。

プロフィール

税理士 畑中孝介(はたなか たかゆき)
TKC連結納税システム推進プロジェクト会員
TKC企業グループ税務システム小委員会委員

著書
『税務に強い会社は成長する!!』(大蔵財務協会)
『平成22年度 すぐわかるよくわかる 税制改正のポイント』(TKC出版)
『企業グループの税務戦略-グループ法人税制・連結納税制度の戦略的活用-』(TKC出版)

システム・コンサルティング事例
株式会社大和証券グループ本社様

ホームページURL
ビジネス・ブレイン税理士事務所

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