TKC全国会 中堅・大企業支援研究会(中大研)

掲載日:2010.07.05

グループ法人税制と連結納税制度の比較検討のポイント

第7回 子法人の繰越欠損金持ち込み制限の一部緩和によるメリット

税理士  畑中 孝介 TKCシステム・コンサルタント
税理士  畑中 孝介
平成22年度税制改正においてグループ法人税制が創設されました。そこで、皆さんが気になる制度の概要や連結納税制度との相違点、比較検討のポイントなどを全10回にわたって連載いたします。

2010年7月5日掲載

 今回は、連結納税制度改正の最大ポイントともいえる「子法人の繰越欠損金持ち込み制限の一部緩和」をご説明します。

 これまで、連結納税加入時の「子法人の繰越欠損金の切捨て」が、連結納税制度導入の主な阻害要因といわれていました。事実、昨年12月に開催されたTKC連結納税セミナーのアンケートで、70%を超える参加者が、連結納税制度の阻害要因として「子法人の繰越欠損金の切捨て」を挙げていました。
 そして、平成22年度税制改正で、この「子法人の繰越欠損金の切捨て」が改正され、長期保有法人については、繰越欠損金の持ち込みが可能となりました。これにより、連結納税制度の導入が一段と促進するのではないかと思われます。

 今回の改正の目的として、以下の4点が挙げられます。

  1. 子法人の繰越欠損金の切捨てが、連結納税導入の阻害要因となっていた。
  2. 組織再編税制では、5年以上企業グループ内にある法人の欠損金等の利用が原則可能なため、制度の一本化を図った。
  3. 諸外国では、一定の条件のもと、欠損金の持ち込みが認められている。
  4. 組織再編税制と連結納税制度との間で、長期保有法人の欠損金の持ち込みの取り扱いに齟齬が生じていたため、企業のグループ経営や再編手法に対し、中立性が失われていた。

 また、繰越欠損金の持ち込みが可能となる子法人は以下の通りです。

  1. 親法人に長期(5年超)保有されている100%子法人
  2. 親法人又は100%子法人により設立された100%子法人
  3. 適格株式交換による完全子法人
  4. 適格合併、適格株式交換等による子法人で被合併法人、株式交換完全子法人又は株式移転完全子法人の長期保有していた100%子法人
  5. 法令の規定に基づく株式の買取り等により親法人の100%子法人となった法人

 そして、今回の改正で、連結納税制度、組織再編税制、グループ法人税制において、繰越欠損金の利用制限・資産の譲渡損益(含み損)の利用制限について、ある程度の統一化が図られることとなり、税制として一本化の方向性が明確になりました。
 これにより、今まで組織再編税制を適用してから連結納税を導入せざるをえないようなケースであっても、今後は、直接連結納税制度を採用できるようになるなど、制度の選択の自由度はより高まることになり、一層の連結納税の導入が見込まれます。

(参考)各制度における租税回避行為への対応

  繰越欠損金の利用制限 含み損の利用制限
連結納税制度 子法人の繰越欠損金の持ち込み制限(法81の9) 時価評価(法61の11①)
組織再編税制 繰越青色欠損金額の引き継ぎ及び損金算入制限(法57③) 特定資産譲渡等損失額損金不算入規定(法62の7)
グループ法人税制 所得通算が不可能なため規定なし グループ法人間の譲渡損益の繰延(法61の13)

【欠損金の種類】

 今回の改正を受け、欠損金は以下の3種類に分類されることになります。そのうち1)、2)を、連結欠損金額と言います。

  1. 特定連結欠損金
    連結子法人の開始・加入前の欠損金で、当該子法人の所得を限度として繰越控除可能とされるもの
  2. 非特定連結欠損金
    連結加入後の欠損金及び連結親法人の開始・加入前の欠損金で、連結全体で繰越控除可能とされるもの(新設株式移転等の子会社の欠損金も親法人同等として含まれることとなる)
  3. 切り捨て欠損金
    連結納税に持ち込みができない欠損金

【連結欠損の繰越控除の順序】

 連結欠損金の繰越控除は以下の順序で行われます。

  1. 古い事業年度分から控除
  2. 同一連結事業年度中に特定連結欠損金と非特定連結欠損金がある場合には、まず特定連結欠損金を控除し、その後に非特定連結欠損金を控除

プロフィール

税理士 畑中孝介(はたなか たかゆき)
TKC連結納税システム推進プロジェクト会員
TKC企業グループ税務システム小委員会委員

著書
『税務に強い会社は成長する!!』(大蔵財務協会)
『平成22年度 すぐわかるよくわかる 税制改正のポイント』(TKC出版)
『企業グループの税務戦略-グループ法人税制・連結納税制度の戦略的活用-』(TKC出版)

システム・コンサルティング事例
株式会社大和証券グループ本社様

ホームページURL
ビジネス・ブレイン税理士事務所

会計・税制の改正情報をいち早くお知らせします!メールマガジン配信申込みはこちら

免責事項

  1. 当コラムは、コラム執筆時点で公となっている情報に基づいて作成しています。
  2. 当コラムには執筆者の私見も含まれており、完全性・正確性・相当性等について、執筆者、株式会社TKC、TKC全国会は一切の責任を負いません。また、利用者が被ったいかなる損害についても一切の責任を負いません。
  3. 当コラムに掲載されている内容や画像などの無断転載を禁止します。