TKC全国会 中堅・大企業支援研究会(中大研)

掲載日:2010.07.20

グループ法人税制と連結納税制度の比較検討のポイント

第8回 連結納税制度採用による税効果会計のメリット

税理士  畑中 孝介 TKCシステム・コンサルタント
税理士  畑中 孝介
平成22年度税制改正においてグループ法人税制が創設されました。そこで、皆さんが気になる制度の概要や連結納税制度との相違点、比較検討のポイントなどを全10回にわたって連載いたします。

2010年7月20日掲載

 今回は、大きなメリットになる可能性があるにもかかわらず、見逃されがちな「連結納税採用による税効果会計のメリット」についてご説明します。

[単体納税]

 下記のような単体納税(グループ法人税制)の法人があったとします。(税率40%)

A社 (親法人)  赤字 △30  ・・・税額 0  + 繰越欠損400
B社 (子法人)  黒字 130  ・・・税額 52
 グループ全体の税額は 52

 仮に毎年このような状況であったとしましょう。
 A社は持株会社で毎年赤字のため、回収可能性はありません。全額が評価性引当金となり、繰延税金資産は計上が認められないと思われます。

[連結納税]

 そして、連結納税制度を採用した場合、以下のようになります。(税率40%)

A社 (親法人) 赤字 △30
B社 (子法人) 黒字  130
連結所得100 欠損金控除100・・・税額 0(A社:△52(還付) B社:52)
 グループ全体の税額は 0

 上記において、A社は赤字分の税額をB社から回収することが出来るため、回収可能性があることになります。これが、親法人の赤字や株式移転子法人の赤字の場合には過去の繰り越し分まで全額相殺対象となりますのでかなり大きな金額になる可能性があります。
 この場合、連結納税制度採用による税金面でのメリットは「52」ということになります。

 また、当年の実績で将来も推移した場合、欠損金の残額300について、毎年100ずつ欠損金の控除が可能となるため、3年で欠損金が解消することになります。監査法人の判断によりますが、300に対し120の繰延税金資産の計上が認められる可能性があります。
 この場合、税効果会計によるメリットは「120」ということになります。

 つまり、税金面でのメリット「52」に、税効果会計によるメリット「120」を加えた「172」のメリットが、決算上発生する可能性があることになります。税額52に相当する税金面でのメリット(=キャッシュフローの改善)だけでも大きな影響であるといえますが、法人税等調整額において大きな利益インパクトをもたらすということになります。
 グループ全体で「100」の所得の法人が、連結納税採用で「172」ものメリットを受ける可能性がある。これは、経営に対して非常に大きなインパクトを与えることになります。

 赤字の子法人がある場合や、それ以上に親法人に多額の欠損金がある場合、持株会社に多額の欠損金がある場合にも、上記の例のように、連結納税制度採用による税効果会計のメリットが発生する可能性があります。
 持株会社は、収入の多くが配当収入です。会計上は黒字であっても、税務上は受取配当等の益金不算入の影響で、課税所得が赤字になり欠損金が積み上がるようなケースが多くあります。このような場合、連結納税制度を採用し、事業会社の黒字と持株会社の欠損や繰越欠損金を相殺することで、税額の減少につながることが多くあります。

 実際の事例として、とある会社がIR情報として「連結納税制度採用により、繰越欠損金及び連結納税における税効果会計の適用により、適用しない場合に比べ利益が百数十億円増加しております。」と開示していました。上記のように、五十億円程度が欠損金の控除による実際の税務面でのメリット、残りの百億円近くは税効果会計等のメリットだったのではないかと推測しています。

 平成22年度からグループ法人税制が導入され、連結納税制度の採用件数は今後増えることが予想されます。株主代表訴訟の対象にならないよう、今からグループ全体のメリットデメリットはしっかり把握し、適切な申請・不申請の判断を行っておきたいものです。

プロフィール

税理士 畑中孝介(はたなか たかゆき)
TKC連結納税システム推進プロジェクト会員
TKC企業グループ税務システム小委員会委員

著書
『税務に強い会社は成長する!!』(大蔵財務協会)
『平成22年度 すぐわかるよくわかる 税制改正のポイント』(TKC出版)
『企業グループの税務戦略-グループ法人税制・連結納税制度の戦略的活用-』(TKC出版)

システム・コンサルティング事例
株式会社大和証券グループ本社様

ホームページURL
ビジネス・ブレイン税理士事務所

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