TKC全国会 中堅・大企業支援研究会(中大研)

掲載日:2010.08.16

グループ法人税制と連結納税制度の比較検討のポイント

第10回 戦略的な税務部門の構築

税理士  畑中 孝介 TKCシステム・コンサルタント
税理士  畑中 孝介
平成22年度税制改正においてグループ法人税制が創設されました。そこで、皆さんが気になる制度の概要や連結納税制度との相違点、比較検討のポイントなどを全10回にわたって連載いたします。

2010年8月16日掲載

 最終回は、今後の税務部門のあり方についてご説明します。

 平成22年度税制改正のメッセージは、「連結経営が進展し、税務も連結で考える時代になりました。」ということではないかと思っています。
 グループ法人税制の導入あるいは連結納税制度の改正を踏まえ、これからは、税務に関してもきちんと連結全体の最適化を考え、視点を親会社だけでなくグループ全体へ拡げていくことが重要となるでしょう。

【タックス・コンプライアンス】

 まず、最低限の前提条件ともいえる「タックス・コンプライアンス」の確立です。
 今後は、税務リスクが高まることが予想されます。例えば、付帯税などの想定外の税金が発生する可能性があり、それが新聞等で報道された場合、イメージダウンにもつながりかねません。そうした税務リスクが起こらないよう、事前に、いかにシミュレーションしておくか、いかにミスが起こらない体制を作っておくのかが重要なポイントとなります。
 また、その一方で、「やらない(知らない)ことによる税務リスク」も増加しています。特に、これから連結納税制度の採用が増えていくことで、連結納税制度の注目度が高まり、グループ全体で連結納税制度を採用した方が有利なのにやらないままでいると、利益を逸失しているなどと、「株主代表訴訟」のリスクも増えてくる可能性が高いのではないかと思われます。

【タックス・マネジメント】

 第2に「タックス・マネジメント」の視点からは、連結ベースでの実効税率の適切なコントロールが求められます。
 日本の実効税率は40.6%と非常に高い水準にある一方で、グローバル企業は大体30%前後以下となっています。その内訳を見ると、試験研究費の特別減税、外国税額控除の適用、連結納税制度の適用、概ねこの3点で10%を超える実効税率の引き下げを実現しているようです。この3点の共通点は、自主申告・自主届出であり、あくまでも自ら進んで「活用」できるかが大きなポイントとなります。
 実効税率の引き下げは、税引後利益の増加を意味しており、1億円の税金コスト削減は、50~100億を超える売上を上げたのと同様の経営へのインパクトがあります。

 これらを踏まえると、今後はタックス・コンプライアンスに加えて、タックス・プランニングを超えた、グループ全体でのタックス・マネジメントが必要になってきます。しかも、単に親会社だけの最適化ではなくグループ全体での最適化、そして組織再編やグループ法人税制、連結納税制度・税効果会計を複合的に組み合わせて理解し、自社のグループにとって最適なタックス・マネジメントとは何かを考えながら、実効税率の引き下げを図っていくことが求められているのではないでしょうか。
 その意味では、従来は「守備」的であったものが「攻撃」的な側面も持つことになり、「グループ全体での戦略的な税務」といった視点が税務担当者に求められてくるでしょう。これにより、必然的に企業戦略と密接にかかわらざるをえなくなり、企業の経営企画や経理マネジメントと綿密にかかわりながら、経営戦略の中の重要なファクターとして、タックスのメリット・デメリットをきちんと整理し、伝達しておくという役割が重要になります。

 今回のグループ法人税制の導入、連結納税制度の改正は、グループ全体のタックス・マネジメントを、単体からグループへと飛躍させるチャンスであると感じています。単なるタックス・コンプライアンスからタックス・プランニングへ、さらにグループ全体のタックス・マネジメントへ、是非活躍のステージを広げてください。

 今回で、10回にわたるコラムを終了させていただきます。長期にわたりお付き合いいただきありがとうございました。

プロフィール

税理士 畑中孝介(はたなか たかゆき)
TKC連結納税システム推進プロジェクト会員
TKC企業グループ税務システム小委員会委員

著書
『税務に強い会社は成長する!!』(大蔵財務協会)
『平成22年度 すぐわかるよくわかる 税制改正のポイント』(TKC出版)
『企業グループの税務戦略-グループ法人税制・連結納税制度の戦略的活用-』(TKC出版)

システム・コンサルティング事例
株式会社大和証券グループ本社様

ホームページURL
ビジネス・ブレイン税理士事務所

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